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ジャズギタリストにパット・マルティーノと言う人がいる。ディスコグラフィーと言った事に詳しくないが、白人で、もう結構な爺さんだと思う。風貌は眼鏡を掛けた気難しい学者タイプである。
この人、本サイトで初のお目見えだと思う。ひょんな事からこの人の名を知った。と言うのも、ジャズギターなるジャンルは「でぇきれぇ!」と言っている割には、研究用(研究なんてほとんどしていないのだが)として有名どころのジャズギタリストを色々と聴いている。
1年、いやもっと前かな、パット・メセニーを何枚か図書館で借りようとパソコンで予約していたら、同じパットでもマルティーノって人がいるのに気付いた。どうやらジャズギタリストらしい。だったら一緒に借りちゃおうって事で「All Sides Now」と言うアルバムを借りてみた。
このアルバム、白人ジャズギタリストって事もあり、パット・メセニー、ジョン・スコフィールドやジョン・マクラフリンのように洗練されたちょっとお洒落なジャズだった。ブルージーなんて言葉はこの人にはないのではないかと思うくらい。邦題を「光と影のギタリズム」と言い、全10曲で10人のギタリストと共演している。共演ギタリストは以下の通り。
1, チャーリー・ハンター
2, タック・アンドレス
3, ケヴィン・ユーバンクス
4, レス・ポール
5, ジョー・サトリアーニ
6, カサンドラ・ウィルソン
7, マイク・スターン
8, マイケル・ヘッジス
9, マイク・スターン
10, ジョー・サトリアーニ
5曲目なんてジョーさん、普通にハードロックしちゃっている。なるほど、中々面白いアルバムだ。しかもアルバム全体がやっぱりお洒落で煩くもないし、BGMに最適だと読書しながら良く聴いていた1枚だ。
でもただそれだけってだけで特に気にするジャズギタリストではなかったのだが、最近「Think Tank」と言うアルバムも聴いてみたら、まぁ凄い!。弾きに弾きまくっているのである。帯宣伝には「超絶技巧のカリスマ・ギタリスト、パット・マルティーノのコルトレーン・トリビュート」となる。
コルトレーンと言えばシーツ・オブ・サウンド(要はギターで言えば間髪入れずの超速弾きである)、だから当たり前にピロピロと、特にアップテンポの曲では休符無しにひたすら弾きまくっている。「All Sides Now」を聴く分ではメロウなギタリストだと思っていたが、弾く時は弾くなぁとぶったまげたのだ。
まぁ、ジャズギタリストってのはおおむね、ロックギタリストよりもテクニック、理論に長けているから、名の知れているギタリストなら、ロックギタリストよりも速弾き出来ちゃう人が多い(しかもナチュラルトーンでだ!)。でもこの人の「Think Tank」でのギターは凄い。帯宣伝の通り、超絶である。
と言うのも、これは聴く側のセンスの問題だが、フレーズの作り方、アウトの仕方が、非常に心地良いのである。要するにオレが好むフレーズを延々とピロピロと演ってくれちゃっているのだ。特にジョン・コルトレーンがオリジナルのAfricaと言う曲では、ほとんどEmの一発コードなのだが、まぁどうしてこんなにも音が外れまくっているのに美しいのだろうか?、と強烈に感心してしまうのだ。
ライナーノーツを見ると、この人、相当な理論派のようで、しかも独自の論理感を持っているらしく(どうやらフィラデルフィア芸術大学なるところで理論&論理を教えているようだ)、ライナーには概略が掲載されていたが、凡人のオレには全く理解出来ない。
作曲法も何か神懸りっているようで、例えばアルバムタイトルのThink Tankと言う曲のメロディラインは、COLTRANE(コルトレーン)、TENOR、BULEと言う文字列から作り出している。Cをドと解釈すると、Oはラに、Lはミ、Tはファと言ったように暗号のような変換を図っているのである。
こうするとCメジャー、ハ長調の曲と思われるが、どっこい、コードはAm7なんて鳴っているから、Aナチュラルマイナー、ジャズ的に言えばAエオリアンなのだ。しかも知らないうちにEm7が鳴っていたり、気が付くとBm7も使っているか?ってな具合で、調性音楽でなく、モードはモードだが、ちょっと聴いただけでは良く判らないのである。
この通りにNatsumeと言う文字列でメロディを作ると、ソラファミソファミと実際に弾いている見ると、なるほど、種明かしされちゃうと馬鹿馬鹿しいが、こういう作曲法、とってもユニークである。これだと何度も「フンフン」とする鼻歌作曲なんてやらなくとも良いし、調性音楽のようなコード進行からメロディを作り出す必要も無い。
とにかく自分が好きな文字列をローマ字にし、さらにそれを変換していけば立派なモード曲が腐る程作れちゃう。ライナーノーツにも本人の弁として「音楽理論はそれぞれの論理で解釈するもの」なるくだりがある。まさに共通の音楽理論を自己の論理で解釈したもので、これなら誰だって作曲が出来る。目から鱗・・・。
後はコードでしょ。モードの解説でも書いたが、Cメジャースケール上の音を使っていたとしてもバックが他のダイアトニックコードが鳴っていれば、それのモードになる。Em7が鳴っていればそれは「ソラファミソファミ」と言うメロディはEフリジアンだし、G7が鳴っていたらGミクソリディアンなのだ。
こういう方法でバラードでなんか作っちゃったりするとしよう。モードでバラードを作るのなんて簡単だ。単にテンポを落とせば良いのだから・・・。その際に恋人や片思いのオネーチャンの名前を文字列に加えたりして、作曲したら、宅録しちゃおう。そしてCDにそれを焼き、誕生日などの記念日にそれを渡す。「このメロディはね、君の名前を盛り込んで、いいかい、ドレミファ〜は英語でCDEF〜だろう、うんたらかんたら・・・」なんてやってみそ!。ロマンチストのオネーチャンだったら、即コロリしちゃうだろう。
何はともあれ、フレーズがとにかくカッコイイ。良く聴くと、指癖っぽい類似フレーズが多く出てくるのだが、オレのセンスにマッチする音使いが気に入っている。本サイトの読者の多くはロックギタリストであろうから、これを是非とも聴きなさい!、とは言わない。アウト感を楽しみたいのだったら、フランク・ギャンバレとかスコット・ヘンダーソン辺りを聴いた方がロックギタリストには遥かに馴染みが良い。でもちょっぴりジャズにも興味がある、そんな人にはパット・マルティーノの「Think Tank」、お勧めである。
リード楽器にテナーサックスが加わっているから、オレのようなジャズギターだけの音だと飽きちゃうなんて人にも良いし、ベース好きにもこのアルバムは堪らない。楽曲をmp3化して、小型のスピーカーで再生していても、ベースの1音1音が非常にクリアーに聴こえるのだ。こういうジャズアルバムは珍しい。アップライトのウッドベースが使われているが、マイクやミキサー側のイコライザーのセッティングなのか、エレキベースに近い迫力のある音が鳴っているのだ。だからジャズアルバムなのだが、どことなくフュージョンの匂いが香ってくるのだった。ジャズギターアルバムなのにここ数日で、フェイバリットなアルバムになりつつある。
他にもう1枚、「The Maker」と言うアルバムも聴いてみたが、どのアルバムもジョン・スコフィールドのような変態的サウンドではなく、あくまでもお洒落なジャズアルバムで、BGMとして上物、今後、この人のアルバム、もう幾つか聴いてみようかと思う。もし、彼に特化した、もしくは彼が監修、執筆したギター教本を見つける事が出来たら、かなり食指をそそられそうである。
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